潜在的なものを含めると、日本の睡眠時無呼吸患者数は200から300万人とも言われており、決してまれな病気ではありません。睡眠中に息が止まると眠りが浅くなり、起きたときに頭が重く感じたり痛くなったりすることがあります。また、血液中の酸素の量が低下する結果、血管がストレスにさらされて高血圧症、脳梗塞や心筋梗塞を発症しやすくなってしまいます。さらに居眠り運転による事故などを起こすリスクも高まります。
ご家族やご友人にいびきを指摘されたことがある方や、日中の眠気が強い方、会議中に強い眠気に襲われる方は睡眠時無呼吸があるかどうか検査を受けられることをお勧めします。
当院では睡眠時無呼吸の検査を行っています。検査機器をご自宅に持ち帰っていただき、寝る前にご自分で鼻および指先にセンサーを固定していただきます。ふた晩寝ている間の呼吸状態や血液の酸素飽和度などを記録していただき、機器を当院へお持ちいただいて結果の解析を行います。いびきや日中の眠気でお困りの方は、気軽にご相談ください。
折りたたむ
睡眠時無呼吸は「寝ているときに10秒以上呼吸が止まる状態」と定義されており、1時間の睡眠中に5回以上、もしくは7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸を生じると、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
自覚症状やご家族のお話から睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まず簡易検査を行います。手の指や鼻の下にセンサーをつけて普段と同じように寝ていただく検査ですので、お仕事や日常生活についてはそれほど心配することなく受けていただけます。簡易検査の結果、より詳しい入院検査が必要と判定されれば、検査実施可能な施設に紹介させていただきます。
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、重症度や原因によってマウスピース(スリープスプリント)、外科的療法、CPAP(シーパップ)療法から適切な治療法を選択します。
マウスピース
マウスピースは軽症の睡眠時無呼吸症候群に用いることが多い治療法です。歯科・口腔外科医で作成していただき、就寝時に装着することでのどの空気の通りを確保しておく治療です。重症の睡眠時無呼吸症候群に対しては効果が乏しいとされています。
外科的治療
外科的治療は口蓋扁桃肥大やアデノイド肥大によりいびき・睡眠時無呼吸をきたしている小児で行うことが多いです。成人ではCPAP療法の効果を高めるための鼻科手術や口蓋垂軟口蓋咽頭形成術を行うことがあります。
CPAP療法
睡眠時無呼吸症候群に対し最もよく用いられているCPAP(Continuous Positive Air Pressure、持続陽圧呼吸)療法は、寝ているあいだ鼻にマスクを装着して、マスクから空気を送ることで空気の通り道を常に確保して睡眠時無呼吸の発生を軽減する対症療法的な治療です。CPAPの器械は保険診療下にレンタルして使用するのが一般的で、治療を継続するために1か月に1回(使用が安定してくると2か月に1回)、医療機関で診察を受ける必要があります。